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特徴

Datachemical LAB 活用事例インタビュー

研究と教育の現場から

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対談

大島 達也先生

宮崎大学 工学部
化学生命プログラム 教授

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吉丸 昌吾

データケミカル株式会社
代表取締役CEO

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背景

研究・教育現場に広がる「ノーコード×マテリアルズ・インフォマティクス」

-教育プログラムでのAI活用へ──学生が“データで考える力”を育む、宮崎大学の挑戦-

材料開発の加速に欠かせない「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」は、いまや産業界のみならず、教育の現場にも広がりつつあります。
しかし、MI教育には専門知識やプログラミング(Pythonなど)といった高いハードルがあり、カリキュラムへの導入は決して簡単ではありません。
本対談では、宮崎大学・工学部の大島達也 教授が、ノーコードで使えるMIツール「Datachemical LAB」をご自身の研究室や大学での講義において活用し、学生たちが「自ら課題を設定し、AIで仮説を検証する」学びに挑戦した事例を取り上げます。
「データで考える」力を育てる実践教育、その背景とリアルな手応え、そして未来への展望とは──。教育DXの最前線を、ぜひご覧ください。

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出演者紹介

大島先生

出演者

大島 達也 先生
宮崎大学 工学部
化学生命プログラム 教授

吉丸

インタビュアー

吉丸 昌吾
データケミカル株式会社
代表取締役CEO

1.  機械学習を研究に活かし始めたきっかけ

吉丸(司会)

本日はお時間をいただき、ありがとうございます。早速ですが、貴学でのDatachemical LAB導入から約3年が経ちました。まずは先生の研究における活用についてお伺いさせてください。

大島先生

私の研究は金属塩化物錯体の溶媒抽出に関するものなんですが、従来は金属錯体の設計が重要な研究に焦点が当たりがちでした。一方、私の研究対象は、溶媒そのものの物性が金属抽出において重要なパラメータとして効いてくる系であることに気づき、そこから溶媒のデータを集めて整理する方向に意識が向いていきました。
最初は溶解度パラメータを使って定性的に抽出能力を整理していたんですが、「もう少し踏み込めるのでは」と思い、抽出率を定量的に予測できないかと考えたんです。

吉丸

そこから機械学習に取り組み始められたのですね。

大島先生

ええ。ただ、当時はPythonでコードを書くのが前提でして、私も含めて情報系出身ではない研究室ですから、やっぱり継続的にやっていくには難しさがあったんです。そんな中でDatachemical LABがリリースされて、「これならいける」と。そこから研究室での機械学習活用は一気に広がりました。

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2.  Datachemical LAB活用で広がる、学生主導の機械学習

吉丸

Datachemical LABを導入されてからの変化はいかがでしたか?

大島先生

一番大きかったのは、「プログラミングが要らない」ことですね。そこが学生にとって非常に大きなハードルを取り除いてくれたと思います。化学系の学生にとって、Pythonを1から勉強してモデルを構築するのはハードルが高い。でもDatachemical LABなら、素養がなくても取り組める。
結果的に、うちではもうPythonに戻るという選択肢はなくなりました。機械学習をやるならDatachemical LABでやる、という方針でやっています。

吉丸

成果にも繋がっているんでしょうか?

大島先生

最初に取り組んだ抽出率の予測モデルで、決定係数が0.94くらいの精度が出たところから始まって、今は学生が扱うデータ量も増えていますし、検証方法も変わってきました。現在は決定係数が0.98〜0.99と、かなり精度の高いモデルも構築できています。

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3.  教育現場で見えた手応えとデータ活用のリアル

吉丸

貴学とは、教育面での連携を目的に、弊社との間で連携協定を締結させていただいております。その一環で、今年は教育でもDatachemical LABを実際にご活用いただきました。

大島先生

はい。宮崎大学・工学部ではDX教育の取り組みが進んでいて、今回その実験演習の中でDatachemical LABを活用しました。これまでは、学生にPythonでコードを書かせるという構想もあったのですが、時間や技術的な制約が大きくて現実的ではありませんでした。

吉丸

Datachemical LABならそこをカバーできるということですね。

大島先生

ええ、今回は「有機化合物の水溶解度予測」をテーマに、モデル構築から検証までを一通り学生に経験させました。多くの学生にとっては、通常の学生実験とは全く違う体験だったようです。
特に、CSVでデータを瞬時に取得できるとか、構造式から特徴量を抽出して予測するという流れは、新鮮だったようで、「こんなことができるのか」と驚いている様子もありました。

【演習内容】

有機化合物のlogS (水溶解度) 予測

既存の800種の有機化合物の構造(SMILES表記)と水溶解度データを学習データとして使い、以下の手順で機械学習予測を体験。
 

①記述子計算:学習データでの有機化合物の構造からRDKitで208種の分子記述子を生成

前処理:特徴量選択を行い、不要な記述子を除き、解析に適したデータに整理

データ可視化:相関係数のヒートマップや散布図等を用いてデータの特徴量を把握

有機化合物のlogS (水溶解度) 予測

④ モデル構築・予測:学習データを用いて予測モデルを構築し、各自が調査対象として選んだ化合物のlogSを予測

⑤ 検証:予測結果と文献値を比較し、構造との関係を考察

Datachemical LABを活用した実験演習の様子

Datachemical LABを活用した実験演習の様子

4.  実験科学と機械学習─“データ不足”との向き合い方

吉丸

研究や教育での機械学習活用の課題はどういったところにあるとお考えですか?

大島先生

データ量は課題ですね。実験系の研究って、基本的にデータの数が限られてしまうんですよね。ハイスループットで数万件データを取るような研究と比べると、どうしても条件が厳しい。
我々がやっている金属抽出の溶媒探索は、溶媒のスクリーニングにより比較的多いデータが収集できるテーマだったので、機械学習と相性が良かった。だから今は、どんなテーマなら現実的にデータが取れて、モデル化に向いているのかを常に考えながら進めています。

吉丸

やはり、テーマの特性や研究の現実に即して、どれだけデータが取れるかを見極める視点が重要になるのですね。まさに、そういった「データが限られている現場」でこそ、Datachemical LABが貢献できると考えています。少量のデータでも精度の高い予測が可能となるよう、様々な機能の改良を重ねてきました。今後も研究・教育の現場と連携しながら、この分野の可能性を広げていきたいと思っています。

 5.  AI・機械学習とどう付き合うか─これからの学生に必要な姿勢

吉丸

最後に、これからデータサイエンスを学んでいく学生さんに向けて、一言いただけますか?

大島先生

まず、AIや機械学習を過信しないことですね。今回の学生実験でも、予測精度は良かったとはいえ、完全に一致するようなモデルではありませんでした。でもそれでいい。むしろ、「うまくいかないこともある」と体験することが大事なんです。

吉丸

なるほど、それが使いこなすということなんですね。

大島先生

そう思います。機械学習も統計学の延長線上にあるものなので、結果がすべてではないし、そこからどう考えるかが大切です。AIが発達してデータサイエンスの重要性が増していくので、従来の理論科学的なアプローチ一辺倒ではなく、統計的手法を積極的に取り入れる姿勢が不可欠になってきます。なので学生には、「AIを使いこなす」という意識を持ってほしいですね。うまく使えば確かに強力な武器ですが、振り回されるものではありません。そういった“距離感”を持って、主体的に取り組んでもらいたいと思います。
また、今後は教育現場での活用を視野に、より実践的なパッケージ教材の開発にも取り組んでいきたいと考えています。

吉丸

素晴らしい取り組みだと思います。弊社としても大学教育の中でより広くDatachemical LABを活用できる機会を提供していきたいです。先生の教材開発へのお取り組み、ぜひ当社としてもご協力させてください。

大島先生

是非お願いします。

吉丸

ありがとうございました。先生の研究と教育に真摯に向き合う姿勢に、私たちも大いに刺激を受けました。

大島先生

こちらこそ、ありがとうございました。

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現在、当社では有償利用いただいているアカデミックユーザー様に教育用途でのDatachemical LABの活用の機会を提供しております。

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